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鹿児島地方裁判所 昭和43年(行ウ)1号 判決 1975年12月19日

鹿児島市南新町七番一五号

原告

有限会社 久保商店

右代表者代表取締役

久保祐吉

右訴訟代理人弁護士

金住則行

金住典子

鹿児島市易居町一番六号

被告

鹿児島税務署長

石川敏彦

右指定代理人

石井康郎

愛甲浦志

浜田国治

村上悦雄

宮田正敏

村上久夫

右当事者間の昭和四三年(行ウ)第一号法人税更正決定処分取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、原告

(一)  被告が昭和四〇年一一月三〇日付でなした、原告の昭和三六年四月一日から昭和三七年三月三一日までの事業年度分法人税についての更正処分および重加算税の賦課決定処分、ならびに昭和三九年四月一日から昭和四〇年三月三一日までの事業年度分法人税についての決定処分および重加算税の賦課決定処分(但し、両事業年度分とも裁決によつて一部取消された後のもの)を、いずれも取消す。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決。

二、被告

主文と同旨の判決。

第二、当事者の主張

一、請求原因

(一)  被告は昭和四〇年一一月三〇日、原告の昭和三六年四月一日から昭和三七年三月三一日までの事業年度(以下「昭和三六事業年度」という)の法人税について、所得金額五〇一万八、五九三円、法人税額一八〇万七、〇三〇円とする更正処分および重加算税五四万二、一〇〇円の賦課決定処分(原告は昭和三九年五月二九日、右事業年度の原告の所得金額なしとして確定申告した)、ならびに昭和三九年四月一日から昭和四〇年三月三一日までの事業年度(以下「昭和三九事業年度」という)の法人税について、所得金額九六四万七、九三八円、法人税額三五七万七、五五〇円とする決定処分および重加算税一二五万一、九五〇円の賦課決定処分をした。

(二)  原告は、右各処分を不服として被告に対し異議申立をしたが却下されたので、熊本国税局長に対し審査請求をしたところ、同局長は昭和四二年九月二〇日右各処分を一部取消して、原告の昭和三六事業年度分法人税について、所得金額四七二万八、九九三円、法人税額一六九万六、六四〇円、重加算税額三三万二、五〇〇円、昭和三九事業年度分法人税について、所得金額八七六万五、四四七円、法人税額三二七万三、〇〇〇円、重加算税額七九万四、五〇〇円との裁決をした。

(三)  しかし、原告には両事業年度とも右のような所得はなく、本件更正および決定処分ならびに重加算税賦課決定処分は違法であるので、右各処分の取消を求める。

二、請求原因に対する被告の答弁

(一)  請求原因(一)および(二)の事実は認める。

(二)  同(三)の主張は争う。

三、被告の抗弁

(一)  原告の昭和三六および昭和三九各事業年度の所得金額は、次のとおりである。

1. 昭和三六事業年度

(1) 加算項目

土地売却金 九九〇万円

原告が昭和三六年一〇月一七日訴外今吉覚次に対し、原告所有の鹿児島市山之口町九二番の九宅地九二・四六坪(昭和三八年九月一一日町名変更および土地区画整理法に基づく換地処分により同市千日町八番の五宅地六六・一五坪となる。以下「山之口町九二番の九の土地」という)を売却した代金。

(2) 減算項目 合計三九八万〇、〇三一円

イ、土地売却原価 二三〇万円

山之口町九二番の九の土地はもと訴外前野東意の所有であつたところ、原告は昭和三五年三月一八日競落により右土地を取得したものであるが、その際の競落代金およびその他の取得費用として原告が要した額。

(右売却原価として、裁決では三三〇万円が計上されていたが、その後の調査で二三〇万円であることが判明した。)

ロ、営業費 一〇二万九、六〇〇円

原告が営業費の額を明らかにしないので、同業類似法人の売上に対する営業費の割合一〇・四パーセントを適用して算出。

ハ、支払利息 合計六五万〇、四三一円

(イ) 鹿児島信用金庫に対する支払利息 二三万〇、二八〇円

原告の鹿児島信用金庫からの借入金三〇〇万円に対する日歩三銭八厘の割合による昭和三六年四月一日から同年一〇月一九日まで二〇二日分の支払利息。

(ロ) 宮崎相互銀行鹿児島支店に対する支払利息 四二万〇、一五一円

明細は別表(一)のとおり。

(裁決では、支払利息として合計八四万一、四〇七円が計上されていたが、その後の調査で右のとおり合計六五万〇、四三一円であることが判明した。)

(3) 所得金額 五九一万九、九六九円

右(1)から(2)を控除した残額。

2. 昭和三九事業年度

(1) 加算項目 合計一、四七五万〇、七九四円

イ、土地売却金 一、四七三万円

原告が昭和三九年七月二〇日訴外鹿児島県教職員互助組合(契約書上の買受名義人は桑原一喜)に対し、訴外松崎俊ほか五名と共有の鹿児島市山下町二〇四番宅地五〇四・一六坪(昭和四一年二月二四日町名変更および土地区画整理法に基づく換地処分により、同市照国町一一番の三宅地三六三・二三坪となる。以下「山下町二〇四番の土地」という)の原告の共有持分二七分の九を売却した代金。

(裁決では、右土地売却額は一、四六三万九、三三八円と計上されていたが、その後の調査で一、四七三万円であることが判明した。)

ロ、受取利息 二万〇、七九四円

谷山東部農業協同組合、日本勧業銀行鹿児島支店等における代表者個人名義および偽名預金の受取利息。

(2) 減算項目 合計五七七万一、〇〇四円

イ、土地売却原価 三八〇万円

原告が昭和三六年九月七日、訴外池ノ上トキほか三名から山下町二〇四番の土地の共有持分二七分の九を買受けた際、売買代金およびその他の取得費用として原告が要した額。

ロ、営 業費 一五二万二、四九一円

同業類似法人の売上に対する営業費の割合一〇・四パーセントを適用して算出。

ハ、支払利息 合計四四万八、五一三円

(イ) 宮崎相互銀行鹿児島支店に対する支払利息 二六万九、一七五円

明細は別表(二)記載のとおり。

(ロ) 熊本相互銀行鹿児島支店に対する支払利息 一七万九、三三八円

明細は別表(三)記載のとおり。右支払利息は、原告が鹿児島県教職員互助組合(以下「互助組合」という)に対し山下町二〇四番の土地の共有持分を売却する際、原告が右土地を更地として互助組合に引渡す約があり、右更地とするために要する資金調達の便宜を図るため、互助組合の専務理事桑原一喜名義で熊本相互銀行鹿児島支店から借入れがなされ、右借入金の利息を原告が負担したもの。

(裁決では、支払利息として合計五七万二、一九四円が計上されていたが、その後の調査で右のとおり合計四四万八、五一三円であることが判明した。)

(3) 所得金額 八九七万九、七九〇円

右(1)から(2)を控除した残額。

(二)  原告の昭和三六および昭和三九各事業年度の法人税についての本件更正および決定処分ならびに重加算税賦課決定処分(但し、いずれも裁決によつて一部取消された後のもの)は、いずれも右所得金額の範囲内でなされたものであるから、何ら違法な点はない。

三、抗弁に対する原告の答弁

(一)  抗弁(一)1(1)の事実は否認する。原告は山之口町九二番の九の土地につき、今吉覚次名義に所有権移転登記をしたが、右移転登記は今吉にだまされてしたもので、売買代金を受取つたことはない。

(二)  同(一)1(2)の事実は争う。山之口町九二番の九の土地の取得については、原告は少なくとも三〇〇万円を要した。

(三)  同(一)2(1)イの事実は否認する。山下町二〇四番の土地の共有持分は、前持分権利者から原告会社代表者である久保祐吉個人が買受けたものであるが、将来原告の資金繰りがついた場合には原告が右共有持分を買受ける予定であつたので、便宜上前権利者から原告名義に持分移転登記がなされたものである。

しかし、その後原告の資金繰りが思わしくなかつたため原告が買受けることができないまま互助組合に売却されるに至つたものである。

(四)  同(一)2.(1)ロおよび(一)2.(2)の事実は争う。

第三、証拠関係

一、原告

(一)  甲第一ないし第九号証、第一〇号証の一ないし三、第一一号証の一、二、第一二号証の一、二、第一三ないし第二六号証を提出し、証人桑原一喜、同田村虎雄、同牧春雄、同松崎俊、同富ケ原久治、同浜田金之助、同白川正敏、同今吉覚次、(第二回)の介証言および原告代表者久保祐吉本人尋問の結果を援用。

(二)  乙第一号証、同第一三号証、同第四九号証、同第五二ないし第五六号証、同第五八号証、同第六〇、第六一号証の成立は認める。その余の乙号各証の成立(同第四五号証の一、二、同第五七号証の一、二は原本の存在についても)は知らない。

二、被告

(一)  乙第一ないし第一七号証、第一八号証の一、二、第一九号証の一、二、第二〇号証の一、二、第二一号証の一、二、第二二号証の一、二、第二三号証の一、二、第二四ないし第二六号証、第二七号証の一、二、第二八、第二九号証、第三〇号証の一、二、第三一ないし第三三号証、第三四号証の一、二、第三五ないし第四〇号証、第四一号証の一、二、第四二号証の一、二、第四三号証の一、二、第四四号証の一、二、第四五号証の一、二(同号証の一、二ともに写)、第四六号証の一、二、第四七号証の一、二、第四八号証の一、二、第四九ないし第五六号証、第五七号証の一、二(同号証の一、二ともに写)、第五八ないし第六一号証を提出し、証人今吉覚次(第一回)、同江頭毅、同谷川勇、同梅木正彦、同佐藤和一の各証言を援用。

(二)  甲第一ないし第九号証、同第一〇号証の一、同第一一号証の一、同第一二号証の一、同第二〇、第二一号証、同第二六号証の成立は知らない。その余の甲号各証の成立は認める。

理由

一、請求原因(一)および(二)の事実については、当事者間に争いがない。

二、そこで、まず昭和三六事業年度の法人税に関する本件更正処分および重加算税賦課決定処分の違法性の有無につき検討する。

(一)  土地売却金について

成立に争いのない甲第一五号証、同第一六号証、同第二三号証、乙第一号証、証人今吉覚次の証言(第一、二回)により真正に成立したものと認められる乙第二ないし第四号証、証人江頭毅の証言により真正に成立したものと認められる乙第五ないし第一一号証、証人今吉覚次(第一、二回)、同江頭毅の各証言によれば、次の事実が認められる。

1. 昭和三六年一〇月ころ今吉覚次は原告会社代表者久保祐吉から、原告所有の山之口町九二番の九の土地を鹿児島信用金庫に買取つてもらうべく斡旋方を依頼され同信用金庫に赴き相談したところ、同信用金庫は右土地の買受けを断つたが、今吉が右土地を買受けるのであれば、その買受資金は融資してもよいとの意向を示したため、今吉は右信用金庫から融資を受けて自ら右土地を買受けることとし、同月一〇日ころ前記久保との間で右土地を代金九九〇万円で買受ける旨の契約をし、そのころ手付金として一二〇万円を支払つた。

2. その後同月一八日前記信用金庫から今吉に対し、一、一〇〇万円の融資がなされた。ところで、残代金の支払は、久保の依頼により同月一九日、今吉が融資を受けた金のうちから原告の右信用金庫からの借入金三〇〇万円およびこれに対する昭和三五年五月二六日から昭和三六年一〇月一九日までの利息五八万四、八二〇円を今吉において振替支払、さらに今吉は久保の指示により同日、同信用金庫に藤原レイ子名義の普通預金口座を開設して同口座に合計五一一万五、一八〇円を預金したうえ、そのころ右預金通帳を久保に引渡して代金を完済した。

右のように認められ、右認定に反する原告代表者本人尋問の結果は前記証拠に照らしたやすく信用できず、他に右認定を動かすに足りる証拠はない。したがつて、原告には右土地売却により九九〇万円の売上があつたものと認められる。

(二)  土地売却原価について

証人江頭毅の証言、同証言により真正に成立したものと認められる乙第一二号証によれば、原告は昭和三五年三月一八日、鹿児島地方裁判所の競売手続で競落して山之口町九二番の九の土地を取得したものであり、その競落代金は二〇〇万円であつたことが認められる。右事実に成立に争いのない乙第五六号証によつて認められるその他の取得費用を合わせ考えると、原告が右土地の取得のために要した総費用は、被告主張の二三〇万円を超えないものと認めるのが相当である。右認定に反する原告代表者本人尋問の結果は前記証拠に照らしたやすく信用できず、他に右認定を動かすに足りる証拠はない。

(三)  営業費について

証人江頭毅、同梅木正彦の各証言によれば、本件更正処分をなすについての被告係員の調査および審査請求についての熊本国税局協議団の調査に際し、原告は帳簿その他の資料の提出をせず営業費の実額の把握が不可能であつたため、裁決の際には、営業費として鹿児島市内に所在する原告の業態に類似した法人の営業費に基づいて右費用を算出したこと、右鹿児島市内における原告類似法人の売上に対する営業費の割合は一〇・四パーセントであることが認められ、右認定に反する証拠はない。そして、原告は本件訴訟においても、右営業費の実額を明らかにし得る資料を提出しない。以上の事実によれば、原告の昭和三六事業年度の営業費は、前記(一)の売買代金九九〇万円の一〇・四パーセントである一〇二万九、六〇〇円を超えないものと認めるのが相当である。

(四)  支払利息について

前記乙第八号証、成立に争いのない乙第四九号証、証人佐藤和一の証言、同証言により真正に成立したものと認められる乙第四六号証の一、二、同第四七号証の一、二、同第四八号証の一、二によれば、原告は借入金に対する昭和三六事業年度における利息および遅延損害金として、鹿児島信用金庫に対して二三万〇、二八〇円、宮崎相互銀行鹿児島支店に対し合計四二万〇、一五一円を支払つたことが認められる。

以上認定の事実によれば、原告の昭和三六事業年度の所得金額は右(一)の売上金額から(二)ないし(四)を控除した五九万九、九六九円と認められるから、右所得金額の範囲内でなされた右事業年度の法人税に関する本件更正処分および重加算税賦課決定処分(右のように売買の事実が認定できる以上、原告が右事実を隠ぺいしていたことは明らかである)には、何ら違法な点はないというべきである。

三、次に、昭和三九事業年度の法人税に関する本件決定処分および重加算税賦課決定処分の違法性の有無につき検討する。

(一)  土地売却金について

1. 原告は、山下町二〇四番の土地の共有持分権利者は原告ではなく原告会社代表者久保祐吉個人である旨主張して争うので、まず右持分権利者につき検討する。

成立に争いのない乙第一三号証、同第五五号証、証人江頭毅、同梅木正彦の各証言によれば、次の事実が認められる。

(1)  山下町二〇四番の土地につき、訴外池ノ上義明が二七分の四、同白川正敏が二七分の一、同白川光照が二七分の一、同池ノ上トキが二七分の三の共有持分を有していたが、昭和三六年九月ころ右各持分の売買がなされ、そのころ右持分合計二七分の九につき原告名義に持分移転登記がなされた。

(2)  原告の定款には営業目的の一つとして不動産売買ならびに土地建物取引業が掲げられ、且つ原告は宅地建物取引業法に基づく県知事の免許を得ているが、一方久保個人は同法に基づく免許を得ていない。

(3)  右土地の売買金による所得につき、昭和三九年度に久保個人の確定申告がなされたことはない。

右(1)ないし(3)に認定の事実を総合すれば、昭和三六年九月に山下町二〇四番の土地の共有持分二七分の九を買受けたのは原告であると認められる。

甲第一号証の互助組合との間の売買契約書には、売主として「久保祐吉」と記載されている。しかし、右契約書の作成日付は昭和三九年九月四日となつているが、前記甲第一三号証によれば、前記土地については既に同年七月二一日付で共済組合専務理事桑原一喜名義に持分移転登記申請の受付がなされていることが認められること、および証人谷川勇の証言によれば、右契約書は原告と原告代表者久保個人との区別に意を払わないで作成されたものであることが認められることに照らして考えると、前記契約書に売主として久保個人を表示するかのような記載があるからといつて、持分権利者が原告であるとの前記認定を妨げるものではないというべきである。また、原告代表者本人尋問の結果中には、本件持分を買受けた当時原告には資金がなかつたので久保個人が買受けたものである旨の供述があるが、原告は右買受け当時の原告の資産を明らかにする証拠は何も提出しておらず、右供述は直ちに信用し難い。他に前記認定を動かすに足りる証拠はない。

2. そこで、右土地共有持分の売却金について検討するに、前記乙第一三号証、証人梅木正彦の証言により真正に成立したものと認められる乙第一四ないし第一七号証、同第二四号証、同第二五号証、証人江頭毅の証言により真正に成立したものと認められる乙第一八号証の一、二、同第一九号証の一、二、同第二〇号証の一、二、同第二一号証の一、二、同第二二号証の一、二、同第二三号証の一、二、証人江頭毅、同梅木正彦の各証言によれば、原告は昭和三九年七月ころ山下町二〇四番の土地の共有持分二七分の九を互助組合に対し一、四七三万円で売却し、右代金のうち、一、四四六万円は互助組合専務理事桑原一喜名義振出の小切手四通(内訳振出日昭和三九年九月三日の分として、額面四〇〇万円および一二六万円各一通、振出日同月四日の分として、額面八五〇万円および七〇万円各一通)で支払われ、一七万九、三三八円は原告の負担すべき右同額の熊本相互銀行鹿児島支店に対する借入金利息を互助組合において前記桑原一喜名義振出の小切手で支払い、さらに残額九万〇、六六二円は昭和四一年一月一二日現金で支払がなされ、代金全額が完済されたことが認められる。右認定を覆すに足りる証拠はない。したがつて、原告には右土地持分売却により一、四七三万円の売上があつたものと認められる。

(二)  受取利息について

前記乙第二二号証の一、二、証人江頭毅の証言により真正に成立したものと認められる乙第二六号証、同第二七号証の一、二、同第二八号証、同第二九号証、同第三〇号証の一、二、同第三二号証、同第三三号証、同第三四号証の一、二、同第三五ないし第四〇号証、同第四一号証の一、二、同第四二号証の一、二、同第四三号証の一、二、証人江頭毅の証言によれば、原告が互助組合から代金の一部の支払として受領した前記額面八五〇万円の小切手一通は、昭和三九年九月五日右金額のうち八〇〇万円が額面五〇〇万円および三〇〇万円の鹿児島銀行振出の小切手二通に振替えられ、右のうち五〇〇万円の小切手金は、同日登記簿上原告会社の取締役となつている訴外今和泉スミ名義で谷山東部農業協同組合に新規開設された普通預金口座に入金され、さらに同年一一月二四日右預金口座から二〇〇万円が払出され、右金員が同日同農業協同組合に新規開設された久保祐吉名義の普通預金口座に入金されていること、他の一通の小切手金三〇〇万円は同年九月五日日本勧業銀行鹿児島支店の架空人寺岡たつ子名義の普通預金口座に入金されていること、さらに同年一一月一二日右寺岡名義の普通預金から一七〇万円が日本勧業銀行振出の小切手一通に振替えられ、右小切手金はそのころ鹿児島信用金庫に新規開設された架空人坂口栄志郎名義の普通預金口座に二〇万円、架空人山下春香、同中下義則、同黒江良吉郎名義の同信用金庫の定期預金として各五〇万円が入金されていること、以上の事実が認められる。右認定の事実に照らせば、右記載の各普通預金口座および定期預金口座は、いずれも原告の預金口座と認められるところ、前記証拠によれば、昭和三九事業年度において前記谷山東部農業協同組合の久保祐吉名義の普通預金利息として九、一七七円、日本勧業銀行鹿児島支店の寺岡たつ子名義の普通預金利息として一万〇、八一七円、鹿児島信用金庫の坂口栄志郎名義の普通預金利息として八〇〇円、右合計二万〇、七九四円の利息が発生して原告に帰属したことが認められる。右認定を覆すに足りる証拠はない。

(三)  土地売却原価について

証人江頭毅の証言、同証言により真正に成立したものと認められる乙第四四号証の一、二、同証言により原本が存在することおよびそれが真正に成立したものと認められる同第四五号証の一、二によれば、原告は池ノ上トキから山下町二〇四番の土地の共有持分二七分の三を代金一一六万六、六六九円で、池ノ上義明から持分二七分の四を代金一五五万五、五五五円でそれぞれ買受けたことが認められ、右認定の事実によれば、右土地の持分二七分の九の原告の買受代金は三五〇万円であつたと推認される。そして、右事実に前記乙第五六号証によつて認められるその他の取得費用を合わせ考えると、原告が右土地の共有持分取得のために要した総費用は、被告主張の三八〇万円を超えないものと認めるのが相当である。右認定に反する証拠はない。

(四)  営業費について

前記二の(三)に認定と同様の事実により、原告の昭和三九事業年度の営業費は、前記二の(一)の売買代金一、四七三万円の一〇・四パーセントである一五三万一、九二〇円を超えないものと認めるのが相当である。

(五)  支払利息について

前記乙第四九号証、証人佐藤和一の証言により真正に成立したものと認められる乙第四七号証の一、二、同第四八号証の二、証人佐藤和一の証言によれば、原告は宮崎相互銀行鹿児島支店からの借入金に対する昭和三九事業年度分の利息および遅延損害金として、合計二六万九、一七五円を支払つたことが認められる。そして、右のほか前記三の(一)の2で認定のとおり、原告は熊本相互銀行鹿児島支店に対する一七万九、三三八円の利息を負担していることが認められるから、結局昭和三九事業年度において原告が負担した支払利息および遅延損害金は合計四四万八、五一三円と認められる。

以上認定の事実によれば、原告の昭和三九事業年度の所得金額は右(一)および(二)の加算額から(三)ないし(五)を控除した八九七万〇、三六一円と認められるから、右所得金額の範囲内でなされた右事業年度の法人税に関する本件決定処分および重加算税賦課決定処分には何ら違法な点はない。

四、よつて 原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大西浅雄 裁判官 湯地紘一郎 裁判官 谷合克行)

別表

<省略>

(一)

<省略>

(二)

<省略>

(三)

<省略>

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